職人の心情知らズ

フワです

2015年07月30日 16:48

暑中お見舞い申し上げます

それにしても今朝の『まれ』(NHKの朝ドラです、ご存知ない方には参考までに...)には唖然としましたね
何がって、塗師屋の跡目騒動にいきなり登場した息子(役人)が「俺が5代目を継ぐ」と宣言したこと...も然ることながら、それを聞いた祖父(その息子の実父で頭領)が「わかった」と迷いもなく受け入れたこと、にですよ

話が見えない方に改めて説明しますね

『まれ』というのは主人公の希(まれ=パティシエ)の夫である圭太(輪島塗職人)は、親方である祖父の弥太郎からいきなり「引退して圭太を五代目を継がせる」と宣言され、当人の思惑も加えて周囲の「まだ早いのでは」という反対の声に少々困っているわけですが、そこへいきなり登場したのが弥太郎の息子であると当時に圭太の父である博之(役人)、なんですね

まぁ塗師屋の世界で何代目何々とか噺家みたいな跡目があるということにも少々驚きましたが、それはまだいいとして今まで塗師の仕事もせず役人として生きてきた博之が出てきて「俺が継ぐ!」なんて宣言することにまずビックリです、ところが

「ふざけんな!職人の仕事をなめてんのか!」

普通ならこう怒鳴るはずの弥太郎が何の躊躇いもなく「わかった」と受け入れたわけですから観ていたこちらのほうが

「ふざけんな!職人の仕事をなめてんのか!」

と怒鳴りたくなりましたよ

いくら市長選のハクが必要だから(お掃除おばちゃん談)ってブランドじゃあるまいし看板だけ掛け変えれば誰でもいいのか、って感じですがそれならあんなにヤクザみたいな顔をした組合員連中の大反対が起きること自体の辻褄が合わなくなりそうですけどね

まぁ、当の博之は役人ですから、職人の仕事なんて案外とわかっていないのかもしれませんね
得てして役人とはそういうものです

そういう意味で作者が皮肉、もしくは批判的な意味を込めてそういう展開にしたのかもしれませんけど

とはいえ、あんまり役人の...いえ、役人さんの事を揶揄すると仕事に差し障りあるといけないのでこれくらいにしておきますね、はい


(あ~あ、親方日の丸の仕事から抜け出せる日は来るのだろうか...嫌だ嫌だ)

おっと、ココロの声が出ちまった、こいつはいけねぇや、ポコペン


さて

歴史あるモノの修復に携わっていると色々複雑な想いを抱くことも少なくないのですが、それでも
時々、ちょっとしたものを目にすることによってこういう仕事をしているからこそ、なんてこともあるわけです

たとえば、手打ちの鋲

前にもこのブログで書いたことがあると思いますがかつては鋲(釘とも言いますが我々の中では鋲なのです)は機械で作るものではなく、手打ち、つまり手作業によって作られたものが多かったのです

これは秩父の屋台の飾り金具に使ってあった小さな鋲




こんな小さな鋲が手打ちだなんて

何とも愛おしく感じられませんか


その時代の仕事に出会うこと

それが修復という仕事の少ない楽しみ、なのかもしれませんね


それにしても『まれ』...明日はどうなることやら





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